レシピノートの二種類の用途
一口にレシピを扱うノートといってもさまざまです
ここまでのアウトライン(抜粋):
前回までで、そもそも「ノートを使う」とはどういうことかについて考えました。自らの用途に合わせて使っていく。あるいはそういう使い方を可能にする「ノートの語彙」を増やすこと。それを目指すのがよいのではないか、というお話でした。
今回は、似たものの扱いの中にある違いについてちょっと考えてみましょう。
レシピのノート
レシピに関するノートを作る、というのは生活の技術としてポピュラーです。しかし、興味関心の方向によってレシピノートの有り様というのは違ってきます。
おそらくイメージされやすいのはclippingでしょう。レシピが書かれたWebページなどを保存しておき、その日の献立を考えたり、実際につくるときに参考にする。そういうノートの使い方です。備忘的、ないしは管理的な使い方ですね。
私も日々料理をしていますし、レシピに関するノートを作っているのですが、上記のようなclippingはほとんどありません。ではどんなノートなのかといえば、「自分が作った料理」のログです。
(似たページはレシピリスト | 倉下忠憲の発想工房からも確認できます)
料理を作る前にググることはあるのですが、その情報は保存せずに、自分が料理を作った後、その手順を思い出しながら「レシピ」を書き起こしていく、という形で作ります。
で、こうしたノートはどういうときに使うのかと言えば、ほとんど参照しません。ごくたまに「あれって、どうやって作ったかな」と思い出したくなるときがあり、その際には参照しますが、散歩中に霊柩車を見かける程度の頻度です。それ以外は、写真アルバムを眺める使い方に留まっています。趣味的な使い方。
つまり、clippingのレシピノートとは用途がぜんぜん違っているわけです。
そうした違いに眼を向けると何がわかるのかと言えば、重点を置きたいメタ情報が違ってくる、という点です。
たとえば保存してあるレシピから今日作る献立を決める、という使い方をするならば、食材ごとに検索できた方が便利でしょう。タグやプロパティを使って”分類”するのが良さそうです。実際私も、自分のレシピノートを作ったときにそうした分類を思いついて「食材」というプロパティを当てていたのですが、途中でばかばかしくなって一切止めました。ほとんどまったく使わないのです。
私が料理を作るときは、
何かものすごく食べたいものがある
冷蔵庫にある食材でなんとかやりすごす
スーパーで安い食材があるのでそれを中心に
というアプローチがほとんどです。気になったレシピのカタログから検索して何かを選ぶという行為が入り込む余地がありません。で、新しいレシピが知りたい場合は料理する直前(か買い物する直前)にググるわけです。それと似たものを自分のローカルにつくる意義はめちゃくちゃ小さいことになります。
もちろんこれは私の事情であって、いろいろなレシピの情報を集めて、それを分析的に研究したい(細かい違いに敏感になりたい、など)というならばclippingは必要でしょう。でも、それは私の用途には合っていないわけです。
逆に私の用途だと、
作った日付や回数
どういう手順で作ったのか
ミスしやすい点は何か
アレンジの思いつき
といった情報が重要になります。フロントマターで与えられるのはせいぜい「日付」や「回数」くらいで、あとはすべてテキストで書き残すことになります。むしろ、そうしてテキストを書き起こすということをしていると、注意がそこに向き、次回以降の料理作りに役立つ側面があります。これは勉強的な使い方です(復習しているわけです)。
再度強調しますが、私のレシピノートの作り方の方が優れていると言いたいわけではありません。用途に違いによって、ノートの作られ方が変わってくる、という話です。
言い換えれば、ある情報があるときに自分がどういう風にその情報を使いたいと思っているのか、そして実際にどう使うのかを意識して構成(すなわちデザイン)していくとよいだろう、という主張です。
ただし、私がレシピノートに(まったく使わなかった)「食材」プロパティを当てていたように、実際にどう使うのかは事前にはわからないことがあります。むしろさまざまな用途を(一種の理想)として想定してしまう場合が多いでしょう。だから、実際に使ってみた後で「調整」できるとよいと思います。
逆に言えば、最初は極端に固めることをせず、お試しの気持ちでやってみて、実態に合わせてアライメントしていくという進め方が実際的でしょう。ガチガチに固まったテンプレートを私が嫌っているのは、こういう点が影響しています。


