ここまでで二つの「はじめ方」を紹介しました。
どちらであっても、あまり構えずにスタートを切れるかと思います。はじめから作り込むほどに肩の力が入ってしまうので、まずはさっくりと一歩を踏み出すのがよいのでしょう。
でも、どこに向けて?
Obsidianの用途
以下の投稿で、次のように書きました。
なので、Obsidianを実際に使っていくためには「何のために使うのか」を意識することが大切になります。
Obsidianはツール(道具)です。ツールは「何のために使うか」によってその働きは変わってきます。Aのために役立つツールも、Bのためには役立たないかもしれない。あるいは、Xのためにはこうつかったらいいという話も、Yのためには逆に邪魔になる、ということもあります。
ハサミや包丁など手で使うツールは、形状そのものに用途がデザインされています。どう使うのかが物理的に規定されているということですね。だから、慣れてしまえば何に使うのかに悩むことはありません。
一方で、ノートというツールは「書く」ためのツールとして汎用的な性質を持っていて、それ自身でどう使うのかを規定してはくれません。それがツールの自由さでもあるわけですが、あやふやなままに使いはじめるということが起こってしまうことも事実です。
さらに、デジタルなノートツールとなるとその不確かさは最大限まで上昇します。多種大量の情報を一つのツールで扱えることは、その反転として「どう使うのかが、自明ではない」事態を引き起こすのです。
デジタルツールの使い方で悩む人が出てくるのは至極もっともだと言えるでしょう。
アーキタイプ
そこで少し整理してみましょう。どんな用途に使いうるのかを以下の6つのタイプに分類してみます。
学習(覚えようとする)
備忘(覚える代わりに記録する)
管理(行動を方向づける)
趣味(生活を豊かにする)
創造(新しいことを考える)
記述(書くことで考える)
「学習」は何かを覚えるためにノートを使うことです。私たちが一番身近に感じるノートの使い方かもしれません。
「備忘」は、いちいちそんなの覚えていられないよ、というものを代わりにノートに覚えていてもらう使い方です。住所録などが代表例でしょう。
「管理」は、リストを作ったり計画を立てたりして、そこからの行動を願う方に方向づけるためにノートを使う用途です。手帳などの役割と同じ。
「趣味」は、自分の好きなことをより楽しむためにノーをト使うことです。読書日記をつけたり、何かのシールを集めてノートに貼ったりするのがこの用途。
「創造」は、かき集めたものを素材として、新しい考えを生み出す使い方です。カード法などが想定する用途と同じです。
「記述」は、書くことを通して考えを進める用途です。いわゆるフリーライティングが好例ですが、数式を筆算で解くときの「書く」もここにあたります。
あくまでタイプ
以上6つのタイプで、人がノートを使う用途はだいたいフォローできているかと思いますが、もちろん、ある人がノートを使っている理由が1つのタイプに制約されるわけではありません。
たとえば学習内容そのものと学習計画について書くこともあるでしょう。これは学習と管理です。また、学習したことから新しい考えを生み出していくような活動(いわゆるPKM)もあるかと思います。
特にデジタルノートはさまざまな機能を有しているので、多くの場合複合的に使われることが多いかと思います。
だからこそ、自分がどういう用途を欲しているのかを意識して見て欲しいのです。まったく同じツールに情報を保存していても、あるものは「覚えよう」としているのかもしれませんし、別のあるものは「覚えなくてもいい」ようにしているのかもしれません。
同じ情報を扱っているのに求めているのはまったく逆の効果となります。
また、「管理」的なものでは効率性が求められるでしょうが、「趣味」的なものではむしろ非効率の中に豊かさを認めることができます。こうした用途が違うのに、二人の人が同じツールについて「これが正しい、あれは間違っている」などといっても詮無いことオブザイヤー間違いなしです。
さらに「創造」においては、素材の利用が重要になりますが、「記述」においては書き出すプロセスそのものが重要になります。極端なことをいえば、「記述」はプロセスが終了してしまえば、書き出したものがなくなってしまっても構わないのです。ここでも大きな違いが生まれています。
何を求めるのか
というわけで、根本的な問いがやってきます。
「Obsidianを使って、あなたは何をしたいと欲していますか?」
この問いにどう答えても間違いではありません。何を欲しているのかは人それぞれです。ただし、欲していることに適した使い方というのは間違いなくあります。だから、自分が何を欲しているのかと、誰かが提示した使い方がどういう用途に基づいているものなのかは注意を向ける価値があるのです。
ぜひともObsidianや他のノートツールを使いながら、「さて、自分は何を欲しているのだろな」と考えてみてください。
もちろんそれを考えるときにも、ノートを書くことが有用なのはいうまでもありません。