前回に引き続き、Tekenoteについて。
連続のアップデートで次々と機能が追加されているのですが、今回は「ボックス機能」に注目し、そこからデジタルの情報整理について考えてみます。
ボックス機能
カードを並べていくTekenoteですが、それらのカードを束ねる機能と言えばよいでしょうか。感覚としては、Evernoteのノートブックなどようなものが近しいですが、違いはたくさんあります。
まずは、作り方をみていきましょう。
ボックスは、いきなり(≒ダイレクトに)作ることができません。そうではなく、すでに存在しているカードを「ボックスにする」という操作で作成されます。
たとえば、以下のようなカードがあったとします。
テキストの他に、三つのカードへのリンクが含まれたカードです。このカードのメニューボタン(…のやつ)から「ボックスにする」を選択すると、以下のようなビューに。
カード内のリンクとして含まれていたカードが一覧されています。これがボックスです。カードがボックス化する。
一度ボックスになったカードも、同じくメニューボタン(…のやつ)からカードに戻すことができます。カードとボックスはいったりきたりできる。
ちなみに、ボックスになるとカードではなくなるので、カード一覧からは消えます。その代わりに、サイドバーの上部にボックスが並べられるように。
無料版だと現状最大二個までのボックスが作成可能となっています。
カードとボックス
以上が、ボックス機能の概要ですが、ここからはもう少し踏み込んで考えていきましょう。
カードはボックス化して、カードではなくせるわけですが、カードに戻すこともできて、その場合はもともとあった本文がそのまま復帰します。まず、この違いです。
カードの状態でも、他のカードへのリンクがあり、それぞれのカードへのアクセスが確立できているわけですから、わざわざボックス化する意味はなんなのかが気になります。つまり、カードのまま使ってもそう大差ないんじゃね? みたいな疑問。
一つには、機能的な話で、ボックスの内部をアイコンによってフィルターできるようになる点。
現状は三つしかないボックスなのでそこまでありがたみは感じませんが、含まれるカードが増えてくれば「Hot boxに入っている、虫眼鏡のページだけを抽出」という操作ができたら嬉しいでしょう。
純粋なカード状態ではそれができないわけですから、ボックス化する意味はたしかにあります。
逆に、ボックス化してしまうと失われるものもあり、その一つが「リンクではないテキスト」で、もう一つが「任意の順番」です。
たとえば、最初のスクリーンショットに挙げた「Hot box」に書かれていた「ここではホットなカードを扱います」という説明文。これがボックス化すると見えなくなります(再度言いますが、カードに戻せば復元されます)。
この説明文は、Evernoteで言えば「ノートブックについての説明」でありメタ情報です。ノートブックは、ノートに対するメタ情報なのですが、そのメタ情報にもまたメタ情報がありえる。
Cosenseの場合、すべてがページなので、すべての要素について「これは何か」という説明を付与できます。Tekenoteでもカードのときは同様のことが可能ですが、ボックスになるとそれが不可能になります。
もちろん、わざわざ「Hot boxについて」というカードを別に作れば説明自体は可能ですが、そんな面倒なことをいちいちしたくありません。よって基本的には、ボックスについてのメタ情報はなし(あるいは普段目にしない)形で運用されることになるでしょう。
任意の順番
もう一つ面白いのが、カードの並びです。
ボックス状態ではカードは作成日順に並びます。通常の一覧と同じ形ということです。
一方でカード状態では、他のカードはリンクの形で記述されているので、その並び方は任意となります。作成日とは関係なく、自分が並べたいように並べられる。
当然のように、そうした並びに対して見出しでグループを与えるといったことも可能で、だからこそ文脈の形成が可能だと言えます。
ボックス状態ではそれらがまったくなくなります。
だからこそ、この機能は「ボックス」なのですし、あるいは「袋」と呼んでもいいかもしれません。一つの袋の中に、ばさっと投げ込むだけ投げこんでおく。そういう集合(配列)を作る。そういう役割です。
並べ方
こうして対比してみるとわかりますが、Cosenseは「ボックス」機能をつけないというスタンスで開発されています。一覧のソート順はいろいろに選べるけども、他のページの一覧のようなものは極力ユーザーが自分でリンクを書いて並べるように要請している。そんな感じです。
多くの場合、その要請は好ましく働きます。情報を入れるだけ入れて、あとは放置してしまっている状況を抑制してくれるのです。
一方で、雑多にグルーピングするだけでも十分な情報というのはたしかにあります。まとめて袋に入れておくだけで事足りる情報です。そうした情報も、同様に手で並びを書く(≒手をかける)ことをすれば扱えるわけですが、面倒さが勝ってしまうことが多いのではないでしょうか。
Tekenoteのボックス機能は、「とりあえず、集めるだけ集める」という使い方ができ、ある程度集まった後に、それをカードに戻し、自分なりの説明を加えたり、並びを替えたりして、自分の知的生産プロセスを前に進める手助けをしてくれるのではないか、という予感があります。