EvernoteにSpace機能が公開されました。まだβ版ですが、ふつうに使えるレベルではあります。
そういえば、以前のEvernoteのビジネスプランか何かに同名の機能があったような気がするのですが、そういうユースケースは視野外にあったのでぜんぜんフォローしていませんでした。たぶんその機能が他のプランにも広がるという感じなのだと思います。
なんとノートに「強力な新しい組織レベル」が追加されるのです。「組織レベル」って何かよくわかりませんが、ようはオーガナイズの新しい水準が生まれるということでしょう。
一番最初だけ、以下のような選択肢が提示され、選んだらその内容に合わせたスペースが新規作成されます。
私は、あたりさわりのない「ホーム」を選びました。すると、こんな画面が。
上部の左はノートの新着表示で、右は自分が選んだノートの固定表示です。下部には、このスペースに所属しているノートブックとノートが表示されます。
まずここにある「個人の計画」や「家族のタスク」というノートブックは、私がもともと持っていたものではなく、先ほどの選択結果でEvernoteが自動的に作ったものです。わりと邪魔。でもまあ、こんな感じで使うんですよ、という雰囲気は十分伝わってきます。
ようするにこういうことでしょう。
Evernoteは総合ノートツールであり、そこにはさまざまな情報が集まっている。たとえば、仕事用のノート、家政用のノート、趣味用のノートなど。それらが一箇所で扱えるのがEvernoteの魅力だけども、使う場面になるとそれらが入り交じっていると識別が難しくなる。
だったら、そうした用途ごと(コンテキストごと)に区別した空間をつくればいいんじゃね?
概ねこういうイメージです。
たくさんあるノートブックの中から、同一のコンテキストを持つものだけを集めた場所を作る。
ですので、あるスペースに入っているノートブックは、別のスペースには入れられません。ノートとノートブックの対応に似ています。
ちなみに、どこかのスペースにノートブックを「入れた」としても、もともとの「すべてのノートブック一覧」から消えることはありません。そういう全体の集合は残しつつも、用途に合わせた部分集合をつくるのがこのspace機能です。
ノートブックとノート
ここまでは、まあわかりやすいでしょう。でも、ノートブックの集合を作るならノートブックスタックを作ればいいんじゃね? という疑問もあります。たしかに機能的には似ていますね。でも、大きく異なる点が一つあります。それは、スペースがノートブックだけでなく、ノートを含められることです。
先ほどの画像をズームしてみましょう。
4つのノートブックの下に「買い物リスト」というノートが配置されています。これがこのスペースに追加されたノートです。
これまでのEvernoteの整理構造ではこうした並びは作れませんでした。ノートブックの列はノートブックが、ノートの列はノートが並んでいて、交じり合うことが無かったのです。
一方で上記のようにたしかに特定のノートだけが必要で、それが最上位構造に顔をのぞかせていることには十分に意味があります。明らかに使い勝手はこの方が上なはずです。
この感覚は、WorkFlowyのようなプロセス型アウトライナーを使っているときに近いものを感じます。異なる粒度を並べることができる。
spece機能がくるまでは、そうした並びを実現するには「ショートカット」を使うしかありませんでした。ショートカットキーのことではなく、サイドバーにあるショートカット欄ことです。
ここにはノート、ノートブック、タグ、検索結果を並べることができ(今考えたら恐ろしく柔軟性が高いですね)、多くのEvernote・ヘヴィー・ユーザーはここで「自分の構造」を作っていたわけですが(たとえば、「ブラッドによるTimeline system」参照)、大量の項目を並べると使い勝手が落ちるのは古今東西のデジタルツールでのあるある話です。なので、仕事用・家政用・趣味用というような切り分けを行わず、すべてに統一可能な共通の様式で情報を扱うことなってしまいます。
しかし考えてみると、仕事用・家政用・趣味用で必要な細かさや量は違っているのではないでしょうか。言い換えれば、それぞれの局面での適切な「情報整理」がある。
そう考えると、大量の情報群を共通の構造で統制するのではなく、それぞれの文脈に合わせて「空間」を切り分けるやり方の方が実際的な気がします。
もちろんすべてを統合的に考えたいという人もいるでしょうから、全人類が(いや、全Evernoteユーザーが)この機能を使うべしという話ではありませんが、「今から取り掛かる仕事について考えたいモード」と「家族旅行について考えたいモード」を切り分けたい人ならばこのspace機能は有効に使えると思います。
あと、やたらめったらノートブックの数を増やしすぎて、いろいろな役割を担わせている人も、いったんその整理の意味でスペースを作ってみるのはよいと思います。