おさらいしておきましょう。
Evernoteには、ノートブックとタグという二つの整理軸があります。他にも検索に使える要素はいくつかありますが、基本となるのはこの二つです。
ノートブックは、ノートの所属となる概念で、すべてのノートはどこかのノートブックに所属することになります。また、一つのノートが複数のノートブックに所属することはできません。一つのノートは、一つの場所に。明確に、物理的な「場所」のイメージを持っているのがノートブックです。
対するタグは、一つのノートに複数のタグをつけることもできますし、どんなタグもつけないという選択も可能です。
この二種類の整理軸を用いながら自分のノートを「整理」(それがどういう行為を意味するのであれ)していくというのがEvernoteの使い方でした。
実際のタグの使い方
では、Evernoteのタグを私はどのように使っていたでしょうか。大きく二つあります。
ノートブックからの絞り込み
ノートブックを越える串刺し
「ノートブックからの絞り込み」というのは、ようは段階的なフィルターです。たとえば、「Webクリップ」というノートブックがあったときに、「Evernote」というタグで絞り込めば、「Webクリップの中で、Evernoteというタグがついたノート」が表示されます。
「Webクリップ」という大きな集合があり、そこに属するやや小さい集合を引き出すための使い方。これがタグの使い方の一つ目です。
他にも、「Project-hogehoge」というノートブックを作ったときに、「原稿ファイル」「タスク」「参考資料」などのタグを使えば、「project-hogehogeに属する、XXXな情報」という形で絞り込めます。
一つの袋を、より細かく絞り込むための使い方。言い換えれば、まずノートブックという分類があり、その分類に中分類的なものを設ける使い方です。
串刺し
それとは違った使い方がノートブックを超えて串刺す使い方です。
たとえば、「Project-A」「Project-B」「Project-C」のような三つのノートブックがあり、それぞれに「タスク」のタグが付けられたノートがあったら、そのタグだけで検索を書ければ、自分が手持ちの「タスク」を一覧することができます。
Aの集合、Bの集合、Cの集合というグルーピングを越えた、別の切り口での情報を提示することができる。
他にも、アイデアメモのノートに「知的生産」というタグをつけ、Webクリップのノートにも「知的生産」というタグをつけ、自分が書いた原稿に「知的生産」というタグをつけたら、媒体や種別を越えて、「知的生産」というテーマで情報を一覧することもできます。
こんな感じで、一つの袋の中身をより絞り込むためではなく、むしろ複数の袋を越境して情報を集めるのもタグの使い方でした。
合わせると?
この二つを合わせるとどうなるかと言えば、めちゃくちゃタグの数が増えます。そりゃもう、がんがん増えていきます。もちろん、上記以外のタグの使い方もあるわけで、そういうのも加えていくと「タグ」というものの位置づけは簡単に混沌化してしまいます。
情報を「整理」するためのメタ情報が混沌と化す。
好ましい事態とは思えません。
タグは思いつく限りの使い方ができるがゆえに、自分がどう使っているのかがわからない。あるいは、わからないままに使えてしまう「自由度」がある。そういう言い方もできるでしょう。
Capacitiesを使ってわかったのは、一つの袋を絞り込むための袋は別にタグでなくても構わない、ということです。その袋の中でしか通用しない(つまりローカルな)整理軸であってもぜんぜん機能します。タグと切り離してもOKなのです。
もちろん、タグでやっても構いません。それは好みなのですが、その前提として「どういう役割で、自分はこれらのタグを使っているのだ」という認識をもっておくことが必要でしょう。
デジタルツールではイメージ(ユーザーのメンタルモデル)なしに情報を扱っていけます。おそらく多くの問題はそれこそが原因となって生じているのでしょう。