0017 : 部屋を整理、通院と心情と読書、今後のこと等 - Beck‘s Hacks Letter
メールを拝見しました。
僕が下手な素人考えでどうこうするのはやめよう、プロの指導に従おう。気に病んでも何も変わらないし、焦っても良いことは一つもない。分かってはいるけど、難しいもんです。
とても大切なことだと思います。僕も心療内科の先生に診てもらったときに、最初に投薬についての説明を受けて、「どうされますか?」と聞いてもらえたのですが、結局そこでも「う〜ん」と考え込みそうになって、まさにそれが今の自分の悪い状況を作っているなと思い至って「先生はどちらの方が良いと思いますか。じゃあ、そちらでします。もうお任せします」と言ってしまいました。
はっきりいって、それまでの自分の「科学的」な態度からすれば、怠惰とも呼べるものです。医者に丸投げなんて。でも、そのときはっきりわかったのです。そのような「なんでも自分の責として引き受けようとする態度」こそが無理を強いているのだろうと。体に、ではなく、脳に無理を強いているのだろうと。
一時期はストレッチについてもめちゃくちゃ調べましたし、筋トレや運動についてそうとう詳しくなりました。自律神経を回復させる書籍も読みあさり、セミプロみたいな知識を仕入れたこともあります。どれもこれも「自分でなんとかしなきゃ」という姿勢の表れです。
立派ではあるのでしょう。でも、それこそが状況を悪化させていた主因だったのだと今は思います。
「気に病む」という言葉を見ればわかるように、気もまた病むのです。もっと現代的に言えば、脳にも症状が出るのです。
不調の原因が「ストレス」だとしたとして、そのストレスってどこから来ているかと言えば「あれもしなければ、これもしなければ」という気持ちと、「でも、そうなっていない」という状況とのギャップからでしょう。
そう考えたときに、ストレスで心身が悪くなったときに、「自分でなんとかしよう」と考えるのは、症状を悪化させるようなものなのです。しかしながら、「自分でなんとかしよう」という心理的な傾向があるからこそ、そうした状態悪貨が生じているのだとも言えます。だから、自分でなんとかしようと思ってしまうのは避けがたいのでしょう。
そこをばさっと切断してくれる可能性を持つのがお医者さんです。プロです。プロに任せておくから、もう自分は心配しない。自分の「心配」というお荷物を、お医者さんに載せかえる。そのための責任と経験を彼らはもっているのだから、という風に思えるのが(思わせてくれるのが)、お医者さんがお医者さんである理由の一つだと思います。
ストレスがずっとかかっているというのは、ずっと何かが「オン」になっているということで、それを一つずつオフにしていき、脳が「そうか、今は緊急事態じゃなくて、安心して大丈夫なんだ」と思える環境を取り戻していけたらいいのでしょう。
人間って、トラックに轢かれたら死にますけど、鉄骨が頭蓋骨に刺さっても生きている人がいるくらいに不思議な強靭性を持っています。少なくとも「元に戻そう」という力があって、それを何かが妨げているのが、心身の不調が長期的に続いているという構図でしょう。投薬はその「元に戻そう」という力を助けてくれますが、それに加えて自分が抱えている悩みをいったん他の人に預けてみる、という姿勢が大切なのだと思います。
お互いに、ゆっくりやっていきましょう。私たちが逃げないかぎり、人生が逃げることはありませんので。
倉下