最近のデジタルノート系ツールなら、だいたいついている「タグ」機能。
動作自体はシンプルでわかりやすいのですが、実際どう使うかとなると難しさが出てきます。
リアルな世界のタグで考えてみましょう。たとえば、段ボール箱があって中身が見えないけれども、赤色のタグがついていたらこれは重要だとわかる。そういう使い方が一般的です。中身の種別を示したり、行き先を示したりと使い勝手はいろいろ思いつきます。
しかし、たいていのタグは小さいものであり、示せる情報は限られています。だから、それをつける人と使う人で文脈が共有されていないとうまく機能しないかもしれません。
たとえば「北海道」というタグが荷物についていたとして、それが「北海道から来たもの」を示しているのか、これから「北海道に向かうもの」なのかは自明ではありません。短い言葉で示されるタグだからこそ、文脈不足に陥りやすいのです。
この「タグ」の難しさに気がついたのは、Cosenseを使いはじめたときでした。
たとえば、本の書誌情報を取り込んだページを作ったとしましょう。書名がタイトルで、本文に書誌情報や自分の感想が並ぶようなそんなページです。
それまでの──たとえばEvernoteの──情報ツールの感覚から言えば、本の情報を扱ったページであるというメタ情報を埋め込みたくなります。そこで、何も考えずに「#本」というハッシュタグを付与します。不自然なところはまったくありません。
しかし、しばらく使っていると気がつくのです。コンテキストが混線している、と。
たとえばCosenseに自分が思いついた着想カードを書いていたとしましょう。とのとき、メディアとしての本について言及があったとします。非常に重要な概念なわけですから、当然のようにその本という記述をリンクにしたくなります。[[本]]。
これはこれで一件落着なのですが、そうするとその着想カードのページに、それまで自分が買ってきた本の一覧が関連するページとして表示されてしまうのです。
あきらかに「関連」性がずれた表示だと言えるでしょう。もちろん、Cosenseが悪いわけではなく、私がコンテキストを無視して適当な名前でハッシュタグ=リンクを作ってしまったのが原因です。
結局現在は、より厳密な「#書籍名」というハッシュタグを書籍用ページには付与しています。これで先ほどようなコンテキストの混線は回避できます。
もちろん、別のところで「書籍名はどうやって検討するか」みたいなページを作ったときに、[[書籍名]]というリンクを作りたくなったら再び混線が生じてしまいます。
それを見越すならば、書籍用ページに付与すべきハッシュタグは[[書籍用ページ]]なのでしょう。これがもっとも明確にコンテキストを限定できる表記だろうと思います。
ところが、そのプロジェクトにおいて着想カードなどは記録せず、本やら音楽の情報を集めるだけ、という場合ならば別段「#本」というハッシュタグを使っても構わないのです。
ここが難しいところで、その場所にどんなものが含まれるのかという全体を見据えないと最適なタグ設定ができません。その箱の中のコンテキストこそ、決定的な要素なのです。
こんな感じで、ものすごく簡単に使えるタグ機能ですが、よくよく考えていくとどうつけるのか(どう名づけるのか)、という点でじっくり頭を使う必要があることが見えてきます。
もちろん、ツールごとの機能の違いも見逃せません。Cosenseではハッシュタグとリンクは同一のものですが、Obsidianではリンクとハッシュタグ別物になっていて、そこでコンテキストを切り分けることもできるでしょう。タグを階層化できるツールもあれば、近しいタグを表示してくれるツールもあります。
実際の運用はそのあたりも加味して検討する必要があるわけですから、複雑さは高まってきます。だからこそ、デジタルノートについて考える上で、「タグ」問題は避けては通れないだろうと考えております。