zenSidian方式でObsidianを使っていくと、左側のサイドバーがまったく使えなくなります。
★通常のObsidianの画面
★zenSidianのObsidian画面
つまり、何かしらのファイルを探すときに、ファイル構造(ファイルとフォルダで構成される階層構造)が利用できません。
一見するとこれはすごく不便です。特に、パソコンを使い慣れた世代ほどファイラー(エクスプローラーやFinder)で対象のファイルを探すことに慣れています。その慣れたやり方が使えないと、不便に感じてしまう。それは仕方がないことでしょう。
だからこそ、あえてzenSidianではサイドバーを隠しています。特別な状況にならない限り、私たちは手慣れた方法から抜け出ることができません。一種の練習(あるいは修業)として、脱ファイル構造の環境に身を置くことで、それ以外の環境へとシフトするのです。
それ以外の環境?
端的に言えば、Googleっぽい環境です。ファイル構造を辿るのではなく、知りたい言葉でサーチする。そして、あるページを「取り出す」感覚。これがベース。そこに、Webブラウザを使うときの、「お気に入り」の感覚を混ぜます。
具体的に言えば、zenSidian方式で、特定のページを「探す」場合は、拠点ページにブラケットを入力し、自分が求めてるページのタイトルを入力します。で、リンクを作って開く。
あるいは、command + o のショートカットキーでファイルをオープンするためのダイアログが開くので、そこから同様に求めているページのタイトルを入力し、開く。
そういう手順に慣れるための環境がzenSidianです。
ちなみに、呼び出す際にページタイトルをフルで入力する必要はありません。含まれている文字列のどこかを入力すればOK。この感覚がわかってくると、逆にノートのタイトルをつけるときに「後の自分が見つけやすいタイトル」をチョイスできるようにもなってきます。
また、command + o は何も文字列を入れていないと、「最近触ったファイル」が選択肢として表示されるので、そのクイックアクセスとしても使えます。
では、なぜわざわざ練習してまでこのやり方に慣れる必要があるのか。
それはファイル数が増大したときに対応できるようにです。
ファイル数が少ないうちは、ファイル構造でも問題なく使えますし、そっちの方が便利かもしれません。「あのファイルはあの場所にある」とすぐにわかるからです。いちいちタイトルを入力する方が不便に感じられるかもしれません。
しかし、ファイルの数が増えてくるとなかなかそうはいかなくなります。複数のフォルダからどこに置いてあったのかを「思い出す」作業が必要になります。直感的な反応では済まなくなるのです。
さらに、そうしてファイル構造経由で探せるようにするためには、間違いなくその場所に保存しておく必要があります。ルールの規定と実際の保存場所がずれていてはいけなくなるのです。そのための整理コストは、ファイルの数が増えれば増えるほど、保存する情報の種類が増えれば増えるほど、増加していきます。
そしてどこかでバーン!と破綻してしまうのです。
完全に破綻しなくても、ファイルの数が増えると探すためのスクロール量が増え、それが面倒で新しくフォルダを作って階層が深くなっていく、ということは置きがちです。そうなると、フォルダを潜ってファイルを探すよりは、直接タイトルを入力した方がはるかに「早い」のです。時間的もそうですが、認知的にもそうです。「ぱっと取り出せる」のです。
ただし、先ほども言いましたが、そのような利点が実際に感じられるのはファイルの数が増え、階層構造が複雑になってからです。その手間の段階、つまりデジタルノートツールを使いはじめたばかりの頃は──以前からの慣れも手伝って──ファイル構造を経由したほうが手早く感じられてしまう。それをなんとか脱却するための方策が、「サイドバーを使えないようにする」という一種の力技なわけです。
デジタルノートツールは、アナログツールと違って時間が経つほどに保存される情報の数が増えていきます。また、「あっ、これも保存しておいた方がいいな」という発見と共に、保存される情報の種類も増えていきます。使いはじめたときの状態と、5年、10年経ったときの状態は同じではありません。この点は忘れないようにしたいところです。
もちろん、zenSidian方式でもフォルダは作れます。作ること自体はいいのです。プラグインの要請で作らなければならない場合もあれば、単にデイリーは別にしておきたいという気持ちの問題もあるでしょう。そういうのは使ってもらってぜんぜん構いません。
でも、それはそれとして日常的にファイルを呼び出すときに、ファイル構造を使わずにダイレクトに引き出せるように癖をつけておく。タイトルもそれを見越してつけておく。そういう練習を積んでおくことは、長く使い続けていく上で大切なことだろうと思います。