0030 : 倉下さんとライフハッククラブハウスの今後と休む技術について語らう会 - Radio95への返信。
メール拝読しました。
最近お仕事が忙しいようで、若干心配しております。なんとか休むことを、特に体よりも心を休ませることを日常に加えていけたらと願っております。
さて、「残念に思うことを残念に思うのだけはやめたほうがいい」という話ですが、私はこれを「心のハウリング」(MInd Howling)と呼んでおります。マイク~アンプ~スピーカーでループが回ってしまう音のハウリングの心版です。
たとえば、人前に立つときに緊張してしまうのは避けがたいとしても、「緊張している自分に緊張する」となると、加速度的に焦りが増加し、まともに喋れない状態になってしまうことがあります。心配している自分に心配するとか、自己嫌悪する自分に自己嫌悪するなど、そのような再帰の構造はよく見られ、そして音のハウリングと同じようにそれは徐々に強化され、やがては鼓膜を破りかねない結果となります。
最初は小さな出力でしかなかったものが、ループを何度も回ることで巨大になってしまう。終了条件を間違えたループ処理はプログラマあるある話ではありますが、心の健康でそれが起きてしまうと、簡単に「シャットダウン&再起動」ができないこともあり、復旧は難しいと思います。
だから、ある心の状態があったときに、それを無視することもせず、かといって抑え込むこともせず(そうしようとすると、より大きな力で反発してくるのが人間の心です)、「ああ、こういう状態になっているな。まあ、こういう状況だからそう思うのも仕方がない」のように、少しだけ俯瞰的な視点を取ることは、たぶんマイクとスピーカーの距離を置くことに相当するのだと思います。
もちろん、メタ認識の確立は簡単なものではありません。特に精神的に弱っているときはようするに脳の機能が弱っているときであり、メタ認識はまさしく脳の機能であることを考えれば、その難しさは通常時よりも大きいでしょう。それでも、距離を置こうとしない限りは、距離は置けないものだと個人的には思います。
時間はかかるでしょうし、完全にコントロールできるものもないでしょうが、とりあえず頭の中のイメージとして「ハウリングが起ころうとしているスピーカー」とそこから距離をとる自分を描けるようになっておくのは有効かと思います。
それでは、今後の「絶対に頑張らない」というがんばりを期待しております。ご自愛くださいませ。
倉下