サブスタックのメールに返信するのはこれが初めてです。少し緊張しています。
メールを拝見していて、最近考えていることを思い出しました。それは、メディア(媒体)は文章に影響を与える、ということです。
日常的に文章を書いている人にとっては当たり前の話かもしれませんが、それでもこのことについて改めて考えたくなっています。
もちろん、文章はメディアだけでなく、もっと身体的なもの、環境的なものの影響を受けます。たとえば、今は私は普段の作業机ではなく、こたつ机(ヒーターは非稼働)で書いていて、仕事お休みの妻が向こうの方でテレビを見ています。そういったことも、私が書く文章に影響を与えているでしょう。
そして、文章は思考に影響を与えます。もっと言えば、文章を書きながら考えを進める人にとって、文章がいかに書かれるかは強い影響を持ちます。
そこで昨今のメディアです。
昨今のメディア状況は、私の思考にどんな影響を与えているのでしょうか。
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10年くらい続けていたブログの毎日更新を止めたことで、分かってきたことがいろいろあります。
一つは、毎日のブログ更新は、私にとっての「考える時間」だったということです。一日一時間、日常的な雑務から開放され、自分が設定した対象について思考を進めること。これはこれで素晴らしい習慣だったと思います。
一方でその思考がブログというメディアの規定を強く受けていたこともどうやらありそうです。2,000字で言い切れるだけの文章の、R-styleの読者に受けいられる内容を、思考の対象にしていたように思います。
それは、Twitterよりは呼吸は長いものの、しかし、それよりも長い、あるいは別のテーマ性を持つ思考を(あくまで結果的にではありますが)排斥していたように思います。
ブログの毎日更新をやめ、作業記録にフォーマットを気にせずにいろいろ書き込むようになって、そのことを実感しました。私たちは、自分が日常的に触れるメディアに、その思考を規定されているのだと。少なくとも、少なからずの影響を受けているのだと。
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それを変えたいと思い、ここ最近はメディアをさまざまに変えてきました。Scrapoxに書いたり、noteに書いたり、自分で小さなサイトを作ったり、作業記録を共有したり、(メールマガジンがあるにも関わらず)ニュースレターを始めてみたりといったことです。
やはり、いろいろ変えてみると、分かってくること・掴めてくることが出てきます。
たとえば、noteでテーマを決めて5回くらいの連載を書くのは、「ちょうどいい按配」でした。単発記事よりも拾い土俵で活動でき、しかし、長期的連載で置きがちな飽きが避けられるという按配です。
また、サブスタックでは、あえて「昨今のWebについて」とテーマを区切ることで、さまざまな話題を拾えるようになりました。これは、ブログでもメルマガでもできなかった記事の書き方です。でもって、それは私の思考の働き方をも変えているト想像します。
さらに、noteのマガジンを使い「二人で別々のことを書く」連載を試してみたり、他の人の記事に勝手に「レス」してみたりと、これまでのブログの枠組みからは大きく外れたことも試しています。
で、このサブスタックへの返信も、書き終わった後全文をコピーして、自分のサブスタックでも配信してみようと思います。そういうことができるのが、デジタルメディアの面白いことです。
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私が最近興味を持っているのは、「Aをしていたら、Bになる」という複合的な出力です。自分の意識としてはAをしているつもりなのに、結果としての出力はBになっている。そんなアウトプットのスタイルに魅力を感じています。
自分の作業記録を書いていたら、それが他の人にも読めるWebページになるのがその代表例ですし、他にもいろいろな複合の形が作れそうです。
このメールの返信も、メールの返信をしながら、自分のアウトプットを生み出しているという意味で、「Aをしていたら、Bになる」の範疇に入れられるかもしれません。
そうしたアウトプットは、まとまった本を書くのとは違った感触があり、違った思考の働きがあるように感じます。
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メールにあった「新しい何かを開拓したい。自分の中にある未開の地を探索したい」という気持ちは私も強く感じています。そればかりを追い求めてきたと言えるかもしれません。そして、その際にメディアを(そして、その書き方を)新しくしてみることは有効であろうと推測します。
これまでのメディアが規定していた思考からいったん離れ、別のベクトルに身を任せてみることで、何か新しいものが掘り起こせそうな気がします。この文章だって、きっとメールに返信する形でなければ、このような形では書き出せなかったでしょう。
ぜんぜん話は飛びますが、もっといろいろな人が、いろいろなメディアで(つまりTwitterなどのSNSに限定されずに)自分の考えを文章で表すようになったらいいなとよく思います。
ここからは、私のメールを読んでいる人向けですが、もしあなたが何かを考えられたら、ぜひメールで返信してみてください。たぶん、Twitterやチャットでリプライするのとは、違った頭の働き方が生まれるでしょうし、それは決して悪いこと二波ならないと想像します。
なんだかメールの返信なんだかわからない文章になってきたので、いったんここでキーボードから指をおろします。
季節の変わり目は体調を崩しやすいのでご自愛くださいませ。
倉下忠憲