20210614.その文章で書くことをその文章を書いてから考える
急にニュースレターが書きたくなりました。お久しぶりです。
原稿作業が佳境に入り、あれやこれやと忙しくしていたらすっかりご無沙汰になっておりました。これまでの私なら、「ニュースレターの配信」をリピートタスクにして、プロジェクトリストにもがっつり入れて忘れないように管理していたでしょうが、今はもうすっかりそうした仕組みを手放してしまったので、このように思いついたときに更新することになります。
でも、よくよく考えたらそれがナチュラルな状態なのかもしれません。毎日毎日同じ原稿に向き合う、といういささか「不自然」なことをやっているのですから、それ以外の局面は極力「やりたくなったらやる、そうでなければやらない」という自然さをキープして全体のバランスをとっておきたいところです。
ところで、今は次の次の本(7月に発売される本の次の本)の準備を進めています。具体的には本の冒頭をかざる「はじめに」のプロトタイプ稿を書いています。
実際「はじめに」はすべての原稿を書き上げた後に書き下ろすのですが、一番最初に「はじめに」を書いておくと、自分がこれからどんな本を書こうとしているのかが明確になるので、全体の指針を検討する上でも「はじめに」を書いていくのは有用です。まあ、結局最後には書き直すことになるわけですが、別段二度手間というわけではありません。この段階で「はじめに」を書いておくことは、以降の執筆にも良い影響がありそうです。
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ご存知のように「はじめに」はそう長い文章ではありません。全体の概要を提示し、読者にこの本がどんな本なのかを説明する位置づけなので、簡易にまとめることが求められます(たぶん)。
そこでざっくりと「はじめに」の流れをアウトライナーで検討し、それではうまくいかなかったのでミニ情報カードでこざね法を行い、その結果をアウトライナーで再修正して、そのアウトラインを参考にして文章を書き下ろす、ということをやりました。一週間ほど事前準備をし、今日さっき「はじめに」のα稿を書き下ろした次第です。
1時間半ほどで4800字の原稿ができあがりました。一応「読める」文章ですし、町内会の会報くらいならば(特に締め切りが迫っているそれならば)OKを出せるレベルですが、全体的にふわふわとしている仕上がりです。
逆に、自分がそうして書いてみると、「ああ、これとこれについて自分は書きたかったのだな」とわかってくることが少なくありません。こざね法→アウトライナーでは、あくまで「流れ」だけを検討していたのですが、文章を書き下ろしてみると、そこに構造が、もっと言えば構造の起点となる「要所」が見えてくるのです。
もしその要所が三つも四つも見つかるならば、削っていく必要があるでしょう。これくらいの規模の文章にそんなにたくさん要点があっても、全体の印象がぼやけるだけです。一方で、そうして削ったかわりに、是非とも言いたい要素については補強したり、強調したりといった作業をしていくことになります。強調するために、話の順序を整えることも必要です。
そんな風にして文章全体のバランスをとっていくと、やがてそれは要点をベースにした構造ある文章へと変身します。そこまでいけば、──細かい表現の詰めはさておくとして──一つの文章としてGoサインが出せます。
結局この作業は、その文章で書くこと(内容)を、その文章を書くこと(行為)を通して考えている作業だと言えます。いささか定義が再帰しているように感じられますが、別段そうであっても何も困ることはありません。単に、「最初に書いたものが、そのまま完成品になるわけではなく、むしろそれこそがスタートラインなのだ」と思っていれば十分です。
このようなやり方は、まったくもってスマートではないでしょう。
だからこそ、この仕事は人間の仕事なのかもしれません。